大学での楽しみ方

私は直接お会いしたことはありませんが、本を読んで、この方の講義を聴いてみたかったなという先生がいます。慶應義塾大学商学部教授の村田昭治さんです。(ちなみに私の大学での専門は機械工学でマーティングではありません。)  残念ながら村田先生は2015年にお亡くなりになり、私は直接お話をうかがう機会はありませんでしたが、著書に講義を再現したものがあり、講義の雰囲気を感じとることができます。

大分前に私が読んだのが、一般の方向けの慶應のサマースクールでのマーケティングの講義を本にした「村田昭治のマーケティング・ハート」でした。タイトルの通りまさにハートフルな講義内容でした。

最近になって、村田先生が大学最後の年にされた講義が本になっていることを知りました。それが「村田昭治のマーケティング・ゼミナール」です。

大学を辞められる前に村田先生がどんなことを学生向けに話されたのか興味を持ち、早速購入して読んでみました。やはりハートフルな講義でしたが、その中に大学の役割についてのコメントが何回か出てきます。日本の大学は、入るのは難しいが出るのは簡単とよく言われます。実際大学生に会ってみると、勉強よりもサークル、バイト等に力を入れているのではないかと思えるような学生がたくさんいます。これは最近に始まったことではなく、私が大学生だった40年前(古いですね。笑)もそうでした。当時の学生は一般的に、高校までは、大学入試でいい点数を取るために勉強していましたが、大学に入ると、次のハードルの就職では試験ではなく面接重視となっていましたので、結果的に勉強に打ち込むモチベーションが下がっていました。

現在も学びたいことがあるので大学へ進学するというより、取り敢えず大学に行ってから考えようという学生が多いことと思います。でも、内容をよく分からずに入試で選んだ専門の授業を受けてみると、それほど面白くないということはよくあります。となると、やりたいことが勉強では見つからないので、それ以外(サークル等)に力を注ぐというのは自然な流れだと思います。

でも、高い授業料を払って勉強しないというのも何か変な話ですね。

先ほど紹介した「村田昭治のマーケティング・ゼミナール」の中に、その流れを変えるヒントがありました。その部分を抜粋します。

『大学というところは好奇心を目覚めさせるところなんですね。皆さん青春の中にいる人たちの顕在化していない能力をハッと気付かせるのが、大学の講義であります。』

『大学の勉強というのは、皆さん一人ひとりの自分価値の創造へのお手伝いをすることなんですね。自分価値の創造活動は学生時代に緒につくものかもしれませんが完成はしない。未完成で外へ出て行きます。』

『卒業してから初めて勉強の面白さがわかる。そういうきっかけを作ってもらうのが大学の4年間だ。ただ、きっかけだけだ。それだけを持って外へ行け。』

『大学を出たら、専門の勉強をしないといけない。だから私は、学校を出たら勉強しろよ、学校の時代は学ぶという好奇心を植えつけるだけでいいのではないかと言っているのです。』

村田先生の「大学の役割は、学生に何かを教えるのではなく、学生の学ぶ好奇心のきっかけ作りだ」というご指摘は、なる程と腹落ちました。

さらに、次のようなお勧めの行動にも言及されていました。

『慶応義塾入ったら、慶應義塾の中だけにいないで他の大学に遠征しなさい。せっかくの学生時代、一橋大学に行って名物講義を聴いてきましたか。東京大学に行って名物講義を覗いてきましたか。私は学生時代、東京六大学の講義を全部聴いた。関西六大学もほとんど聴いた。九州六大学に行こうと思ったけれども、間に合わなかった。』

私が提唱しているLIFE STAGE理論では、大学時代はFirst Stageに位置しています。そしてFirst Stageは興味関心あることに取り組み、学びの楽しさを味わう時代と定義しています。大学時代に、他の大学まで出かけていって自分の興味関心を拡げていくというのはいいアイデアですね。

私は、学生のときにこの方法は思いつきませんでした。もし学生の時にこの方法を知っていたら、もっと他の大学へも出かけて、興味感心が拡がっていたかもしれません。そしてその結果、全く違う人生になっていたかもしれません。

私がR&D部門の責任者をしていたときには、R&Dのメンバーにイノベーションを起こすために「外へ出る」ことを勧めていました。(6AKW 参照) もしタイムマシンがあれば40年前に戻って、大学に入りたての私に、学ぶ楽しさを知るためには勉強でも「外へ出る」ことが大事だよと教えてあげたいですね。