AI時代の若手の育成

この1年間で生成AIが急激に進化し、身の回りで使うのが当たり前になってきました。これにより仕事の効率が上がるのは間違いないですが、今後発生すると想定される課題も浮かび上がってきます。

社会人最初の5年で勝負がつくというのはよく言われることです。この期間に仕事の量をこなすことにより、仕事に必要な力の土台が固まるのだと思います。もちろん質も大事ですが、基礎を固めるためにはやはり量が必要です。私も若い頃、上司へ説明する資料を作成して持っていっても何度も修正され、その度に自分で考えて、手を動かしてブラッシュアップするという作業で鍛えられました。このうんうん唸りながら頭を使ってブラッシュアップする作業のかなりの部分がAIを使うと効率化されます。その結果、仕事は早く終わりますが、同時に自分の力を鍛える場を失っているということになります。その環境下では、若手がスタッフとして即戦力化するのは早くなりますが、力がついていないので、ポジションが上がっていくとより必要になる、自分の頭で考えるという力が不足しているという事態に陥ることが想定されます。そのため、若手の人材育成の場をどうやって用意するかが、今後各社共通の悩みとなるのではと想定しています。

このAI活用の進化は、発想を変えれば、若手を鍛えるスピードを逆に早くできるのではと考えました。若手のうちに量をこなすと力がつくというのは、自分で考えながら量をこなした場合であって、上司に言われたことを(自分の頭で考えずに)そのままやっているだけでは、いくら量をこなしても力はつきません。つまり量をこなすといっても、力のつく仕事の量をこなすことが必要で、力のつかない仕事は逆に効率化した方がいいですね。AIをうまく活用して、力のつかない単純作業をどんどん効率化していって、浮いた時間を力のつく仕事に振り向けられれば、成長スピードはむしろAIを活用した方が早くなるということになります。私は今まで、世の中の第一線で通用する力をつけるには新卒5年はかかる(それも一生懸命やり続けて)と若手に話してきました。これからAIをうまく活用すれば、新卒5年を新卒3年に短縮できるかもしれません。

では、力がつく仕事とはどんな仕事なのかという疑問が湧いてきます。そこで、私自身の新卒5年間の経験を振り返ってみて、力がついた仕事はどの仕事だったかを考えてみました。

入社後最初の5年間は、工場現場で2年、本社で2年、海外で1年勤務していましたが、それぞれの職場でこの仕事で力がついたなと思った仕事がそれぞれ1つずつありました。この3つの仕事は、やっていることはバラバラですが、共通している点があります。それは何をやるかを自分で考え出して、自分で実行して、うまくいった仕事です。若手のうちは上司から仕事が一杯降ってきますので、言われた仕事をやっていればそれだけでかなり忙しく、上司から文句は言われないのですが、この3つの仕事は、上司からの指示は一切なく私が勝手に考え出した仕事でした。つまり、力がつく仕事とは、何をやるかを自分で思いついて、それを実現する具体的方法を自分で考え出し、自分で実行して成果を出した仕事ではないかと思います。

ただしAIを活用して時間を生み出しても、そこに新たな単純作業が降ってきますので、活用すればするほど、逆に忙しくなり自分で考え出す時間がなくなる可能性があります。似たような事象として、コロナ禍以降リモート会議が当たり前になって、本来移動時間等が空き時間として浮いてくるはずなのに、見ているとスケジュールがきちきちに詰まってしまって以前より忙しくなっている状況をよく見かけました。おそらくAIを活用しても、まとまった空いた時間は生まれないので、隙間隙間の短時間の空いた時間に自分で何をやるかを考え出すことが必要になります。

それを実行するには、虎視眈々と常に「隙間さえあれば新しいことを企もう」と考えていないと難しいと思います。なかなかそんな時間は生まれてこないと思える状況にある人の場合は、先輩の中にいろいろなことを企み実行している人がいるはずなので、その人の技を学び、真似るのがいいと思います。いやいや先輩にもそんなことやっている人はいないという状況にある人は、他の会社でロールモデルとなる人を探してみるといいでしょう。直接話しを聞く機会はなくても、いろいろな記事で紹介されている事例の中に参考となるものがあると思います。

表に出ている記事にはなかなか参考になる事例がないという場合には、企業横断的に入社3年以内の若手を集めて参考となる事例を共有して鍛える道場のようなものを作っても面白いですね。

私が「J-CAD」という就活生の選抜コミュニティを立ち上げて今年で10年目になります。就活のミスマッチをなくし、それぞれが自分に合う企業に入社して活躍してもらいたいという思いで始めましたが、現在いろいろな会社に卒業生が散らばっていますので、彼ら彼女らに入社後5年間で力がついた仕事の事例を紹介してもらうのもいいですね。具体的な事例を聞くと、会社は違っても参考になることがたくさんあると思いますが、やってみないと本当に効果があるのか分からないので、近いうちにこの実験セッションを仕掛けてみようかと思っています。(笑)

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