子ども心の大切さ

1978年に始まった雑誌「小学一年生」のTVのCM「ピッカピカの一年生」。このCMを作った電通のクリエイティブディレクターだった杉山恒太郎さんが書かれた本を、本屋で偶然見つけて買ってきました。子ども心を持ち続けることの大切さがいろいろな角度から書かれています。

この中に、子ども心を持ち続けている人に見られる特徴として、毎日生まれ変われる人という次のくだりがあります。

『新しい人とは、毎日生まれ変わってるんじゃないか、と疑いを抱かせる、そんな人のことです。けっして新しぶってなんかいないのに、二回りも三回りも年下の仲間に囲まれていても結局いつもその人の発言がいちばん過激で面白くて、何かと気づかせてくれる人。既存の常識にまったく囚われていない真の自由人、そんな人のことです。』

その人のいきいきとした姿が目に浮かぶようで、いい表現ですね。子ども心を持ち続けている人に見られる他の特徴として私が思いつくのが、好奇心が強い、根が素直でいいと思ったら方向転換をすぐにできることです。こういう人がいると私は変人と呼んでいます。(以前変人について書いた記事がこちら

子ども心を持つ=本能に従って動けるとも解釈できますが、この本の中に出てくる次の表現は、それを端的に表わしていて思わず笑えます。

『目指すは、本能を制御しない、緩褌(ゆるふん)の生き方だ。』

世の中の凄いなと思う人に共通しているのは、(年齢にかかわらず)子どもみたいに目が輝いていることだと思います。子どもならみんな当たり前に持っている子ども心。それを大人になっても持ち続けることがいかに大変か、それを示している次のピカソの言葉もいいですね。

『When I was a child, I could draw like Raphael, but it took me a lifetime to learn to draw like a child.  ーPablo Picasso』

また、この本には新しいアイディアについても、示唆に富んだ指摘がいろいろと書いてあります。

『「アイディアって、思い出すことなんだよ」なんだかまだ本人の行ったことのない先のほうへ探しにいくことじゃなくて、すでにもうあるもの。』

『アイディアとは思い出すこと、そして、その自分だけのオリジナリティは他人にどこか「懐かしい」と感じさせることが出来るのか。どこかで見た、どこかで聞いた、他人をそんな気にさせるもの、つまり普遍性を持っているかどうか。「新しい」ものはかならずどこかに「懐かしさ」を持っています。それがなければ他人の心に届かない。俗っぽくいえば、当たらないし、ヒットしません。』

その事例がこちら。

『97年にジョブズが暫定CEOとしてアップルに復帰した直後の人気ヒット商品、iMacはまさに”新しくて懐かしい”魅力あふれた商品でした。カラフルでスケルトンのデザインは、”ロリポップルック”と呼ばれるほどにアメリカの50年代の色彩。僕はちょっと郊外にあるドラッグストアのクリームソーダそのものだなと、キカイなのにコンピュータぽくない色とカタチに愛らしさすら感じたものです。』

このセンテンスを読んで、最近手にとった商品で、まったく新しい商品なのになぜか懐かしさを感じたプロダクトを思い出しました。それはston(ストン)という吸引デバイスです。手に持ってみると小石のようで、河原の石ころを思い出します。自然は誰の思い出にも刻みこまれているもの。小石のような手触り感のあるモノ作りはうまいアプローチだなと思いました。

また、これから必要とされる人材について、広告制作者的視点で本質を指摘してありました。

『これからは、問題を素早く解決するヒトが偉いんじゃなくて、いかに面白い問題を作ることができるか。そのままではどうにもならない問題を、ドラマチックで興味深い問題に作り変えることができるか。ここがポイント』

『面白い問題を作れば、面白い答えが見つかる』

次のくだりもこれからの課題をずばりと指摘されています。

『デジタルの怖さは、プロセスを吹っ飛ばして結論しか出てこないこと。そしてやがて本人が結論しか望まなくなってしまうことです』

以上、いろいろと示唆に富んだ本でしたが、こういう本を偶然見つけると、その日はいい一日となります。(笑)

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