好奇心の育み方

私は、これからの時代、必要となるのは「変人」だと考えています。

平成の時代は不便を解消するとビジネスになりましたが、技術の進歩に伴い、現在不便なことはほとんど解消されてしまいました。不便を解消してきた代表商品にiPhoneがあります。かっては私もiPhoneの新製品が出るとワクワクして、毎年買い替えていましたが、最近は買い替えサイクルが2年、3年と伸びています。これは新技術が搭載されていても、買い替えたくなるような決定的な不便の解消要素がないからです。

令和の時代のビジネスでは、不便という明示的なマイナスを解消するのではなく、まだないプラスの魅力を提示することが必要となります。既にそのヒントとなる商品はいくつか出てきています。例えばバルミューダの扇風機「The GreenFan」は、それまでの扇風機の風を送るという機能ではなく、心地いい自然の風を送るという新しい価値を創出し高級扇風機というカテゴリーを作り出しました。これから、こういう新しい価値創出の試行錯誤がビジネスの世界でも続いていくと思います。

これまでは、ビジネスの世界では優秀な人が求められていました。ここで言う優秀な人とは、答えがある問題(課題が分かっていること)を、早く効率的に(低コストで)解く、いわゆる大学入試に強いタイプの人です。これからの時代でも優秀な人は必要ですが、それに加えて変人も必要になってきます。ここでいう変人とは、従来の常識にとらわれず、新しい価値を創出できる人です。

変人に共通してみられる特徴が、好奇心旺盛で、素直にすくすく育っていることです。

幼稚園時代は皆好奇心旺盛です。つまり、変人になる素養は皆さん元々持っていることになります。それが、小~中~高~大学~社会人と年齢を重ねるにつれて、その好奇心が無意識のうちに、常識という鎧兜でどんどん蓋をされていきます。社会人になって年齢が上になり役職が上になるにつれて、「いい年なんだから、そろそろまともになったら」という世の中のプレッシャーを感じて、知らず知らずのうちに好奇心が減衰し、結果として若い頃にあった面白さがなくなっていく人が多いように感じます。

では、どうすれば好奇心を維持拡大しながら変人になっていけるのか? おそらくポイントは2つあり、一つ目のポイントは社会に出るまでの教育にあると睨んでいます。

最近読んだ本で、そのヒントとなることがいろいろと詰まっている本がありました。それは、探究学舎という小学生向けの塾を創設された宝槻泰伸さんの書かれた「強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話」という自伝です。著者の宝槻さんは放り込まれた息子の方です。(笑)

宝槻さんの家庭での学びの経験(お父さんの教育)を抱腹絶倒のストーリーとして書いてあります。この強烈なお父さんの真似をすることはなかなかできないですが、子供の好奇心に火をつける実践的ヒントがいろいろと詰まっています。

また、宝槻さんが探究学舎を作る際に影響を受けたのが当時堀川高校の校長をされていた荒瀬克己さんです。そこで、荒瀬さんの書かれた堀川高校改革の本「奇跡と呼ばれた学校」を読んでみました。

堀川高校は京都市にある公立高校で、1999年にそれまであった普通科に加えて探究科を新設し、生徒が探究学習に熱中する環境を作ることにより劇的に進学実績を伸ばしました。探究科を設置する前は、京都市北部地域の7つある公立高校の4番手だった学校が、2019年には京大合格者を51名(京大合格者数第3位)を輩出する高校になっています。知識習得型の学習に特化して進学実績を伸ばしたのではなく、課題探究型学習も併せて行うという「二兎を追う」形で実績を出しているのが素晴らしい点です。堀川高校の学校説明会で掲げられている『すべては君の「知りたい」から始まる。』というメッセージがこの学校の目指す姿を端的に語っています。高校生の好奇心を育む環境として理想的だと思いました。もし私が今高校生だったら、こんな学校で学びたいなと思いました。

また大学で変人になっていくためのヒントが書いてある本を最近見つけました。「京大変人講座」です。

この本の「はじめに」に書いてある山極寿一京大総長のコメントに、変人になるヒントがいろいろと出てきます。

『常識的なことを考えていたら、それは”常人”でしょう? 変人でないと、これまでとは違う発想ができない。』

『京大には「対話=ダイアローグ」という伝統があります。言い合いながら、「おっ、それ、おもしろいやん。ほな、こうしてみたら?」というように、お互い提案をしながら、しだいに形を変えて新しい場所に行き着く、これがダイアローグなんですね。』

『僕ら研究者は訓練して変人になるのです。始めから変人であるわけではない。そうなるためには毎日毎日「くだらない」「つまらない」と思われても、自分の立てた問いに固執しながらとにかく深く切り込んでみる。それを自分だけで抱えていてはいけません。それだと単なるオタクです。他人と対話をしてみて、「それ、おもろいな」と言ってもらう。「おもろい」と言ってもらったら、さらに未踏峰に跳躍してみる。対話をしながら孤独になるんだよね。』

ちなみに京大変人講座とは、京大の変人の先生を集めた公開講座で、最新の回(5/21開催)の案内はこんな感じです。(終了後に変人BARもありというのがいいですね。)

第12回 京大変人講座のご案内  総長、勝手にやってます!

最近大学生と話す機会が多くありますが、話していて楽しいのは、好奇心旺盛で素直にすくすく育っている人です。年上(70代とか80代)の面白い人に共通しているのも、無邪気な子供心をどこかにお持ちなことです。例えば、お会いしたことはないですがTVで拝見して、養老孟司さんとか糸井重里さんはこの条件に当てはまる方だと感じました。こういう方が増えていくと、いい時代になっていく気がします。

令和が「変人の時代」になるといいですね。(笑)

PS:変人になっていくためのポイント2つのうちもう一つのポイントは、社会人になった(会社に入った)後の仕事の取り組み方にあると感じています。それはまた別の機会に。

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