M-1の凄さ
M-1グランプリ、あるのは知っていたのですが、今まで観たことはありませんでした。2019年のM-1でミルクボーイが決勝過去最高点を出したというニュースを見て、過去最高点の漫才ってどんな漫才だろうと興味持った直後に、偶然本屋でナイツ塙宣之さんの本を見つけ、タイトルにそそられて思わず買いました。そのタイトルは「言い訳、関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」です。(塙さんは関東芸人で、2018年からM-1の審査員をされています。)
その中には、過去のM-1で活躍した芸人さん達の芸の凄さについて、プロの視点から解説がしてあります。この解説を読んでから各コンビの漫才をYoutubeで観ると、おもしろさが倍増します。
中で解説されている漫才コンビと、そのコンビについてのコメントのエッセンスをいくつかピックアップすると、
・中川家 M1-2001優勝、ボケとツッコミのバランスが抜けていた
・ますだおかだ M1-2002優勝、相手の言葉をきちんと聞いてから反応する。そこが抜群にうまかった。
・フットボールアワー M1-2003優勝、完成度は他を圧倒、王者の中の王者と言っていい風格があった
・アンタッチャブル M1-2004優勝、非関西弁で初めての王者。関西弁以外で160キロを投げた唯一のコンビ
・南海キャンディーズ M1-2004準優勝、偉大な革命児。それまでの漫才はボケが点を取りにいき、ツッコミはあくまでアシスト役だったのが、ツッコミの概念が変わった(ツッコミの山ちゃんがフォワード)
・ブラックマヨネーズ M1-2005優勝、M1史上初の9秒台
・チュートリアル M1-2006優勝、2つの革命を起こした。一つは「妄想漫才」というスタイルの完成。もう一つは、イケメンでありながら芸人として認められた点
・サンドイッチマン M1-2007優勝、ツッコミのストレートが速い
・オードリー M1-2008準優勝、漫才界における世紀の発明「ズレ漫才」
・パンクブーブー M1-2009優勝、ネタの水準が高い。よくできた短編小説を読んでいるような気持ちのよさがある
・スリムクラブ M1-2010年準優勝、M1史上最大の革命。スピード化の逆をいった
個々のコンビについての詳細の解説は本に書いてありますが、上記抜粋したエッセンスだけ見ても、素人の視点とはまったく違うプロの視点が感じ取れると思います。
また、この本の中には、なるほどと感じ入るコメントがいろいろと書いてありました。以下本からの抜粋です。
漫才の仕組み
『漫才はボケで笑い、ツッコミでさらに笑うというのが理想です。ボケを倍にするか、三倍にするかはツッコミにかかっています。』
➡ツッコミがここまで重要だとは知りませんでした。
関西弁の凄さ
『関東に住む僕からすると「なんでやねん」は魔法の言葉です。表面上は攻撃しているようで、その実、相手を慈しんでいるようでもあります。関東の言葉で言えば、「なんでだよ」になるのでしょうが、その言い方だと包み込むというよりは突き放している感じがしてしまいます。好きな人に告白するとき、関東人は何と言いますか? 「好きです」か「好きだ」ですよね。強調するなら「とても好きなんだ」みたいな感じでしょうか。本当に言いにくい。嘘くさくて、噛みそうです。そんな時、関西人はなんというか。ものすごくいい言葉があります。「好きやねん」です。思いの深さを伝えるなら「めっちゃ好きやねん」と、伝家の宝刀「めっちゃ」をつければいい。』
➡伝家の宝刀と言われと、たしかにそうだと思いました。
量をこなさなければ質は上がってこない
『ちなみに今も毎日、短めのネタをブログに書き続けています。2006年くらいから毎年365本書いているわけですから、すでに4500本くらい作っている計算になります。そうして、めちゃくちゃたくさんネタを書き、めちゃくちゃたくさん人前でネタをやっていると、いろんなことに気づくようになるんですよね。それだけ量をこなしていたら、馬鹿でもウケるところと、ウケないところがわかってくるじゃないですか。嫌でも洗練されていきます。』
➡まさに「継続は力なり」ですね。
毎日ネタを書かれている塙さんのブログはこちら。時事ネタを毎日作り続けているのは凄いですね。(ちゃんとボケとツッコミに分けて書いてあります。)
好きなことを夢中になって語っている人はそれだけでチャーミング
『「アメトーーク!」の肝は、じつは話している内容ではありません。好きなことを夢中になって語っている芸人の様子がおもしろいのです。その表情だったり、身振り手振りだったりが、笑いを誘うのです。あの番組が長寿であることは、一つの事実を物語っています。好きなものを異様に熱く語るだけで、それはボケになる。』
➡自分の好きなこと、自分が感動したことを話しているとき、その人の顔はいきいきしてますね。他の人のいきいきした顔を見ていると、なんだか嬉しくなります。
最後に、この本の中で塙さんご自身が、これがナイツの「言い間違え漫才」の完成形、とコメントしている、THE MANZAI(2011年)に出演したときの漫才がこちらです。