ウォーターフォール

私は1958年生まれですが、同じ年生まれの有名人というと、巨人の原辰徳監督、プロデューサーの秋元康さん、そして日本画家の千住博さんです。

千住博さんの主な経歴は次の通りです。

1995年:ヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞

2002年:大徳寺聚光院伊東別院襖絵完成

2011年:軽井沢千住博美術館開館

2013年:大徳寺聚光院襖絵完成

2018年:高野山金剛峯寺襖絵完成

私は、千住博さんの絵が以前から好きで、2011年に開館した軽井沢千住博美術館は、おそらく私にとって一番訪問回数が多い美術館です。(展示されている絵が素晴らしいだけではなく、建物も西沢立衛さん設計の心地いい建物です。)

今年7月18日にTV放映された「フランス人がときめいた日本の美術館」でもこの美術館が紹介されており、その中で2017年に制作された「海と空」が現在展示されているとあったので、今年の夏も鑑賞に行ってきました。(ついでに、美術館のショップで次の「海と空」の絵葉書を買ってきました。)

 

 

 

 

 

千住博さんは絵を描くだけではなく本もたくさん執筆されており、私もいろいろと読みましたが、どの本も素人にも分かりやすく芸術について解説がしてあります。

私は、中でも次の本からいろいろなヒントを得ました。

「絵を描く悦び」(2004年)

以下「絵を描く悦び」からの抜粋と、それを読んで感じたことです。

『絵を描くと言うことは、自分にあるものを見つけて磨いていくこと。自分の良さを磨いていくことです。』

『私はこういうところにひかれた、そしてこういうふうだったらいいなという、その、こうありたいというのが絵なのです。そして自分の絵をしっかり見てみる。するとそこから世界が開けていく。なるほど私はこういうものが好きだったんだ、と絵は教えてくれる。』

『画家として大成するには、とにかく好きで夢中になれることが大切ということです。でも、それだけではありません。同じくらい大切なことがもう一つあります。それは「伝えたい心」を持っているということなのです。どうしてもこれを人々に伝えなくてはならない。これを見てくれ、感じてくれ、という強い想いです。』

➡画家は何を描くのかというこの解説は、サード・ステージで何に取り組むのかを考える際のヒントになります。

『そういう、常にアンテナをはりめぐらせるという頭の働き方が身についていれば、何でもプラスになります。とにかくすべてが自分の作品にかかわるさまざまなことであると自覚して、それに正面から興味を持って接していく、つまりで夢中で毎瞬を生きるということなのです。』

➡日々の過ごし方のヒントですね。「毎瞬」というのは真似できないですが。(笑)

 『風景の取材というのは、どこかに行ったらいい山があって、それを描きました、というものではありません。自分の描きたい風景を最初から心に持つのです。そしてそれを探す。その探すという行為が取材をすることの真実なのです。』

『これだ、というもの、それを確かにするためには、心の中で練りに練って、私はこういうものを描きたい、こういう世界を構築したい、その思いを煮詰めることです。そして外に出る。そうしたらそのイメージに合うものは、街の中にも野の中にも海にも山にも、そして人の中にもあるかもしれません。画家はさまざまなものを通して自分のテーマを追うのです。』

『まず実際に出掛ける前に、雑誌の切り抜きや展覧会で見た印象に残った忘れられないイメージ、どこかで見かけた風景やイマジネーションで浮かんだ事柄等をもとに、スケッチブックに自分の好きな構図、風景を自由に描くことから始めましょう。』

『目をつぶったり、コーヒーを一杯飲みながらノートを広げてみたり、そうしながら手を動かしてみる。ふと何か描きたくなるものです。懐かしさ……。そう、それを忠実に集中して思ってみましょう。』

➡風景の取材というのはこういう風にやられているのだというのは意外でした。このアプローチ方法は新しいことに取り組むときに参考になりそうです。

『私はその時に、次なるモチーフと出会うとともに、このスランプからの脱出の後モチーフを探すことには悩まなくなりました。描くものは必ず見つかるという自信を持てるようになったからです。何を通しても自分が出る、という確信です。』

➡やりたいことは「見つける」のではなく、「必ず見つかると自信を持つ」ことが大事。その極意は「何を通しても自分が出る」という思えるようになること。なるほどです。

この本の他にも、「NYアトリエ日記」(2011年)を読むと、千住博さんが日々どう絵に取り組まれているのか、またその熱量が分かり面白いです。

また、「日本画を描く悦び」(2013年)を読むと、日本画に限らずいろいろな芸術の見方が深まるような気がします。

千住博さんの絵は、軽井沢千住博美術館に行けば代表作の「ウォーターフォール」を始めいろいろと観ることができますが、羽田空港の第2旅客ターミナルにも常設展示されていますので、羽田の第2ターミナルを使うときはいつも観ることができます。いろいろな場所にありますので、探してみると面白いですよ。

羽田空港第2旅客ターミナルに展示されている千住博作品の案内

2nd Stage

前の記事

実験思考
1st Stage

次の記事

悪ノリの勧め