第4回【社風の見分け方】

GNP 通信「就活講座」第4回の今日は「社風の見分け方」についてお話します。 

会社は「会った人」で決めろとよく言われますが、これは言い換えれば「社風」で決めろということになります。 学生の皆さんも「社風」が自分に合う会社に入る方がいいというのには納得しますが、「社風」に今一歩こだわりきれないというのも事実です。 これは、そもそも社風が就職活動の限られた時間の中で自分に見分けられるのか、分からないのならこだわったって意味ないじゃないかという意識があるからだと思います。 

例えば JT には17000名の社員がおり、本社だけでも1000名以上の社員が働いています。 さて、この内何名の JT 社員と会えば社風が分かるかというのがポイントです。 皆さんのイメージするのは、最低でも全体の1割ぐらいに会わないと分からないのではないか、1%ぐらいの人に会ったって分かるはずないという感じだと思います。 1%だって170名です。 これでも就職活動の限られた時間では普通は不可能です。(但し、 リクルートに最近入った方で、入社前にリクルートの社員に400〜500名会って話を聞いたツワモノがいたそうですから、まったく不可能とは言い切れませんが)

このイメージに立つと社風に頼った会社選びは機能しないということになります。 実は私も採用活動に従事するまでは、同じようなイメージを持っていました。 実際の就職活動(我々から見れば採用活動)の期間に学生が会える会社の人は多くて10名程度です。 その内本当に話ができるのは数名で、あとは面接官として会い、学生から見れば一方的に質問されるだけの相手となります。 そのため、社風は選択要素として非常に重要だが、実際には学生には使えない選択基準だと思っていました。 

その考えが変わったのは人事部採用担当に異動となり、1年間採用活動で多くの学生と会った後でした。 当時(1988年)はバブルがはじける前で、各社採用広報予算を大幅に増額して、イメージ戦略に力を入れて いる時代でしたが、JT は世間では「旧専売公社で真面目で固い会社」と思われていましたので、私は他社と同じイメージ戦略で行っても勝ち目はないと割り切り、他社とまったく反対の徹底的に学生と会って話すという泥臭い戦略をとることにしました。 具体的には、東京地区の学生の場合、まず私が1人目として会い1時間程度話をし、気に入った学生は別の社員にまた 1時間程度話をしてもらうのですが、他の社員がどのような話をするのか興味があったので、必ず私も同席して話を聞いていました。 これを繰り返し、内定するまで面接とは別に5人程度の社員を学生に会わせましたので、結果として1人の内定者とは私自身5時間程度話をしたことになりました。 これは一見効率が非常に悪い(たくさんの学生と接触できないという点で)採用方法でしたが、結果としてその年の採用はうまくいき、その時採用した社員は現在では会社のGlobal化の中核として数多く活躍してくれています。 

この活動を通して気がついたのが、その時入社を決めた学生は JT の社風を感じ取って最終的に JT を選んでくれたということです。 では、いつ学生は社風を感じ取ったかということですが、私が最初に会ったときではないのは明らかでした。 JT は学生の先入観と、実際社員に会って話しを聞いて受ける印象のギャップが非常に大きい会社だとよく言われます。 当時学生は JT に対する先入観として「真面目で固い会社、安定しているが変化のない会社」というイメージを持っており(今でもそうかもしれませんが)、1人目として会った私の話を聞いて帰るときは、皆さん先入観と違いすぎたので、「この人の話してることはほんまかいな?」という顔付きをしていました。2人目を会わせても帰るときの顔も「まだ話してる内容を鵜呑みには出来ない」というものでした。 ところが3人目を会わせると顔付きが変わってきました。 3名まったく違う経歴の社員が出てきて、それぞれが自分の話を率直に話すのを聞いてきていながら、何かいつも共通するもの(私は「いいかげんさ」と名づけていましたが)を感じ取れたので、帰るときには「どうも自分の感じていることは本当らしい」という顔付きに変わっていました。 

たしかに学生が全員3人の社員に会えば納得していたかというと、中には5名会って初めて納得した学生もいました。 但し、この場合でも顔付きを見ていると、3名で感覚的には納得しているが、頭も(先入観と違いすぎるので)納得するために、あと2人会って間違いないことを確認したという感じでした。 

この 1 年間の経験を踏まえて、「社風は 3 名社員に会えば分かる」という法則を思いつきました。
採用活動 2 年目には、他社と JT とで最後どちらに入社するか迷っている学生に他社の社風の見分け方としてこの法則を伝授し、最終的に本人が納得した上で JT or 他社を選択してもらいました。 

ここで「社風が分かる」とはどの程度分かることを言っているのかがポイントです。
3人会ったぐらいで他人に JT の社風を理路整然と説明することは不可能です。 皆さんに必要なのは、最後の2社でどちらにするか迷ったときに、何となくこの1社の方が自分に合っていそ うな社風だと感じ取れるレベルの「分かる」ということです。 説明できるレベルまで行くのはもっとたくさんの 社員に会う必要がありますが、感じ取れるレベルなら3人で可能だというのが、私の採用活動を通じて得た実感です。 

なぜ3人で分かるかについてその後理由を考えましたが、たどり着いた結論は次の通りです。
1人目の社員と会ったときに、その人から受けるイメージは、会社の社風部分と、その人独自の個性の部分とのミックスであり、受けたイメージから社風部分だけを切り分けることはできません。会った結果、自分に 合っていると感じたとしても、たまたまこの人が個人的に合っていたのではという不安が残ります。 次に2人目の社員と会ったときに、1人目の社員との共通イメージ部分に社風はあるはずですが、2人の重なる部分だとまだ大きく、個性の重なり部分もかなりある可能性があり今一歩絞りきれません。 これが3人目の社員と会ったときには、3人の社員の共通部分はかなり絞られてきますので、その部分がほとんど社風だと見なしてさしつかえなくなります。 これはその後、4人目、5人目と会っていっても重なり部分の面積はあまり変わらないのだろうと思います。 

もう1つ大事なことがあります。 この法則がワークする前提条件として、当たり前ですが、会う3人はその会社の社風に染まっている人でなくてはなりません。 ここでまた問題発生です。 社風に染まった人を見つける方法はあるのかということです。 会った人は自分が社風に染まっているか否かなんて話してくれません。 

これに対する解決策として私は次の仮説を立てました。
「誰でもその会社に5年いれば社風に染まる」
これは私の JT 社員及び他社の方々と接してきた経験上導き出した感覚値です。裏付けはありませんが大体こんなものだと思います。
よく学生がする勘違いとして、サークルとかゼミの1、2年先輩に会ってその会社の社風が分かったと思い込むことがあります。上の仮説が正しいとすれば、まだ社風に染まっていない卒業間もない先輩に、いくら会っても社風は分からないことになります。 

但し、ここで注意する点は5年目以上ならどんな上の人でもいいかというとそうではない点です。 確かに社風に染まっているという点では、上の人になればなるほど確実に染まっていきますので、問題ないのですが、 皆さんが社風を感じ取るためには、その人とコミュニケーションをとる必要があります。相手があまり年上の人だと肩書き等もあり、学生がコミュニケーションをとるの難しいというのが現実です。 私の経験上35才ぐらいまでの社員だと、学生から見て兄貴分/姉貴分という感じで接することができ、コミュニケーションがとれると思います。 

以上まとめると、会う3名は「入社5年目以上、35 才以下の社員なら誰でもいい」ということになります。 これなら、限られた就職活動の間でも何とか会えます。 但し、これでも努力しないとなかなか会えません。 

この社風の見分け方が一番威力を発揮するのは最後に内定した2社どちらにするかで迷ったときです。 おそらく、内定するまでにこの条件の3名の社員と会う機会は(面接等で)あったとしても、コミュニケーション をとる機会(=個別に会う機会)はなかなかないと思います。 普通1~2名と個別に会えたらいい方だと思います。 

そこで、複数内定して2社で迷っているようなら、それぞれの会社の採用担当の人にこの条件の社員と会わせてもらうようリクエストしてみてください。 言い方は「御社のことをもっとよく知って納得した上で入社したいので、30代前半の社員に会わせてください」で対応してくれるはずです。 もし内定者からこういう要望があり、それに対応してくれないような会社でしたら、その会社は個々人を大切にしない会社なのでやめた方が 無難です。(本当は内定前でもこの対応をしてくれるといいのですが、採用担当者は内定を出すまでの期間かなり忙しいので、内定前の学生にこの対応をしてくれないからといって悪い会社というわけではありません。) 

以上、私の採用活動の経験からあみだした方法をお話しましたが、正解はこれだという方法はありません。 要はよく自分の目で会社の人を見ることだと思います。 年が明けてこれからだんだん就職活動も本格化してきますが、皆さん悔いを残さないよう頑張ってください。