第2回【採用面接での合否の決め方】

GNP通信「就活講座」第2回の今日は、学生の皆さんからよく質問のある採用面接についてお話しします。 

「面接官は何をみているのですか」とか「どうやって採用可否を決めているのですか」等々、面接に関する質問をよく就職活動をしている学生から聞かれます。 採用する側は別に変わったことをしているわけではありませんので、採用する側の立場に立って考えてみると答えが見えてくることが多々あると思います。 

まず、気をつけなければいけないのは、採用といっても新卒の採用と経験者採用では企業側のニーズが違いますし、同じ新卒でも、何を期待して採用するかによって採用の判断基準は違ってくるという点です。 例えば 30代半ばの経験者を採用する場合は、即戦力として期待して採用することがほとんどなので、専門の能力、 仕事の実績等が重視されます。一方新卒の場合は、ポテンシャルがあり、入社後伸びて、将来活躍しそうだということが重視されます。 ここで「将来」というのが会社によりどのくらい先に置いているかは微妙に違ってき ますので、これにより判断基準も差が出てきます。 

例えば、新卒であっても 1 年後には活躍して、10年ぐらい頑張ってくれればいいという場合と、30代で活躍してもらいたいという場合、40代で活躍してもらいたいという場合、50 代で活躍してもらいたいという場合(政治家の世界?)ではそれぞれ見るポイントが違ってきます。 

プロ野球の監督として、ピッチャーをドラフト会議で指名する場合をイメージしてみてください。 次のような3人の候補者がいるとします。A投手は大学4年生でスピードは 138km だが、コントロールはあり、変化球の種類も複数もち、中継ぎなら来年から 1 軍で確実に投げられそうな選手。但し、将来先発になるのは難しいだろう。 B投手は大学4年生でスピードは145kmは出るが、コントロールはそこそこで、変化球もカーブしか投げられないため、来年即1軍は無理だが、2軍で2年ぐらい鍛えれば1軍の先発で使えそうな選手。C投手は 高校3年生でスピードは 148kmを出しており、鍛えれば155kmまで出そうだが、現時点での球種はストレートのみで、2軍で5年ぐらい鍛えれば大化けして、将来エースになれるかもしれないが、2軍で終わってしまう可能性も結構ある選手。 この 3 人のうちどの選手を指名するかは、その時の球団の状況、今後どういうチームにしていこうとしているかで変わってきます。 採用も似たような状況で、150kmのストレートを投げ、変化球も持ち、コントロールもいい投手なら全球団欲しがりますが、就職活動をしている学生でそんなスーパーマンはいませんので、ある学生が A 社では内定が出たが、似たような B 社では落ちるということはしょっちゅう起こります。 

ここで、私が JT で採用をやっていた時のことを例としてお話します。 私の場合、どこで活躍することを期待して採用していたかというと、35才〜45才です。 20代での活躍を期待して採用する即戦力型採用ではなく、また40代後半から50代になってから (いわゆるえらくなってから) 活躍することを期待した長期熟成型採用でもありませんでした。
イメージは入社後 5 年間程度 2 軍で鍛えて、1 軍に上がり、その後さらに仕事をこなすことで伸びて 35才ぐらいで 1 軍のレギュラーとなって、45才ぐらいまでフィールドで走り回って活躍するというものです。さらに 40〜45 才ではメジャーリーグで世界を相手に戦うようになるというのが理想です。 (これは、もちろん45才で会社をやめてもらうことを前提にしているわではなく、40代後半はコーチ、50代は監督的立場で会社に貢献してもら おうと考えていました。) 

こういうニーズで採用しようとした場合、見るのは即戦力ではありませんので、TOEICで何点だとか、何か資格を持っているかとか、大学の成績はどうかというようなことは気にしません。 それより、JTという球団にはいって、2 軍で自分で頑張って 1 軍の選手になれそうかどうか、言い換えれば JT 球団の雰囲気に合って、自分で頑張りそうかどうかという相性を見ていました。 ここで大事なことは選手を鍛えるのは、会社ではなく自分だということです。 会社は鍛える場を提供しますが、その場を使って伸びるかどうかは全て自分次第なので、相性というのは重要になってきます。 当然プロの選手として練習に参加するために必要な最低限の基礎能力は必要ですが、それをクリアーすれば、将来活躍できるかどうかは、入社時の基礎能力の大小より、自分で鍛えようというやる気が持続するかどうか、そのカギとなる相性がいいかどうかが判断する上で重要となってきま す。 

さて、会社との相性をどうやって判断するのでしょうか。 これは以外と簡単で、コミュニケーションしてみれば 分かります。 皆さんも合コンで合った相手との相性は、コミュニケーションがとれれば短時間のうちに見抜くと 思います。 ここで大事なのは、質問をするのではなくコミュニケーションをとるということです。 質問とコミュニ ケーションの違いは何かというと、質問は1way ですがコミュニケーションは2way だということです。 私が採用面接を朝から晩までやっていた時には、面接時間は1人20分ぐらいでしたが、ドアを開けて入ってきて目が合った瞬間に(いわゆるアイコンタクトでコミュニケーションして)JT に合うかどうかは 30%の確率で分かり、その後面接を開始して30秒ぐらいで60%、3分コミュニケーションして80%、5分やって95%の確率で20分面接した時の結果と同じ感触を得ていました。(もちろんこの確率は統計を取ったものではなく感覚的なものですが)これだけ短時間に判定できたのは、能力の判定をしていたのではなく、相性の判定をしていたからです。 ですから合格を出した学生と不合格にした学生のどちらが成績がいいかは分かりませんが、JT に合いそうかどうかは分かりました。 但し、その学生が他社(例えば SONY)に合うかどうかは分かりません。 皆さんも目の前の相手が自分に合いそうかどうかはコミュニケーションをとれば自信を持って言えると思いますがが、友達に合いそうかどうかは自信を持っては言えませんよね。 

TSUTAYA というレンタルビデオの最大手の会社がありますが、そこの社長の増田さん(ベンチャー起業家とし て有名な方です)が書いた本の中に、会社がまだ小さいころは採用面接を増田社長みずからやっており、毎日たくさんの学生と会っていると、最後には部屋に近づく学生の足音でその学生がいいかどうか当たりがつくようになったというくだりがあります。一般の方はこれを読むと足音で分かるわけないだろうと言うと思いますが、採用をやっていた感覚からいうと、これは増田さんの本音だと思います。 さすがに足音で分かるというのは達人の域で、私もそこまでは行きませんでしたが、3分でほぼ分かるというのは、毎日面接をやっている採用のプロの世界では当たり前の話だと思います。 

皆さんが面接の最初の段階で会うのは、通常人事の人ではありませんが、最後内定するまでにはどこかで人事の人 (採用のプロ) の面接を受けるはずです。 その結果内定なら、それは「あなたはこの会社に合っており頑張れば1軍で活躍できます」ということを意味し、不合格なら、それは「あなたはこの会社に相対的に見て合っていません」ということを意味します。(決して能力が内定者より劣っているということではありませんので、落ち込まないように。)

では、今日はこの辺で。