チャーミングな変人
2020年2月に出版され話題になった「シン・ニホン」(安宅和人著)を最近読みました。
この本にはこれから必要となる人材像について示唆に富んだコメントがいろいろありました。以下『』内が私が発想刺激を受けた部分の抜粋です。
『技術の実装だけで未来を変えることは難しい。 単なる技術オタクではだめなのだ。大切なのは、目に見えない特別な価値を生み出せるかどうかだ。素晴らしい世界を描き、領域を超えたものをつなぎデザインする力が、これまで以上に重要な時代を僕らは生きている。この観点からも、習ったことをきっちりやる”マシン”的な人では新しい価値の生み出しようがないということがわかるだろう 。』
『欲しい世界を描くことが大切だと述べたが、そこで生み出すべきは単なる機能的な差異を超えた「目に見えない価値」だ。例えば従来型の喫茶店とスターバックスの違いは何かを機能的に説明するのはなかなか難しい。人がいいなと思うであろうことを先んじて感じ、それを自分なりに表現できる力が重要となる。言葉でもいいし、絵でもいい。その両方があるとさらに最高だ 。』
➡これは最近よく言われるようになってきたビジネスにもアートのセンスが必要だという話に繋がります。(本Blog内の関連記事「アートとビジネスの関係」)
『これからは誰もが目指すことで一番になる人よりも、あまり多くの人が目指さない領域あるいはアイデアで何かを仕掛ける人が、圧倒的に重要になる。一言で言えば、これからの未来のカギになるのは普通の人とは明らかに違う「異人」だ。』
『当然「異人」は少ない。しかし異人が大切だと思う社会でなければ、こういう人の多くは異物として排除されるか、秩序を乱す人として潰されてしまう。だから価値観の変容と彼らが生き延びることのできる空間が必要なのだ。またこういう人たちを尊重する価値観の人がある程度以上いて、閾値を超えないと変化は起きない。 』
➡私もこれからの時代、どこの企業でも「変人」(=安宅さんの表現では「異人」)の必要性が高まると考えています。(本Blog内の関連記事「好奇心の育み方」)
『したがってまず身につけるべきは、虚心坦懐に現象を見る力、その上で分析的、論理的に物事を考え整理する力だ。また本物のデータxAI 使い(データプロフェッショナル)、データサイエンティストになりたいのであれば統計数理、数学的な素養こそまず身につけるべきだ。これらの素養や、手を動かして何かを作る場を犠牲にしてまで、プログラミングスキルを先に学ぶ意味がないとすら言える 。』
『この複雑な現象の背後に一体どのようなルール(パターン)があるのかを探る意識を持ち、それぞれの階層構造を読み解くことも意識したい。パッと見て感じたことだけでなく、どのような要素があり、それぞれどのような性質を持ち、それぞれの要素はどのように関わり合っているのかを考える。この結果、普通には見えないものも同時に見えるようになっていくものだ。』
『これからの時代はむしろ、データxAI の持つ力を解き放てること、その上でその人なりに何をどのように感じ、判断し、自分の言葉で人に伝えられるかが大切だ。その基礎になるのは、生々しい知的、人的経験、その上での多面的かつ重層的な思索に基づく、その人なりに価値を感じる力、すなわち「知覚」の深さ豊かさだ。ある種の生命力であり、人間力といえる。また、マシン的な能力が高いこれまでのエリート層とは大きく異なり、「異人」というべき人がカギになる。』
➡AI時代に必要な人材の育成で大事なこと、なるほどと思いました。
『自らが感じたことを、知覚したことをとにかく表現し、アウトプットすることも有効かつ重要だ。絵でも、数式でも、チャートでも文章でも、形式は何でも構わない。表現することで、自分が何を知覚したのかが明確になる。それが次の経験における知覚能力を高めることにつながる 。どのような形であれ、表現することなしに自分が何を分かったのかを理解することは自分でも難しいものだ。この結晶化過程が、知覚する力を高め、観察する力も高め、さらに名前のついていない事象に向かい合う力を高めてくれる。』
➡アウトプットがなぜ重要なのかが分かります。
『大学のクラスで話をした後、「今日の気づきは何ですか」と僕はいつも聞いている。すると多くの学生は単に新しく知ったことを語るが、2~3割程度の学生は自分としてハッとしたこと、新しい驚きを述べることができる。後者が、本当の意味での「気づき」だ。「気づき」は自分の中にある何らかの知識や理解が、異なる何かとつながることだ。人の記憶は儚い。特に学習能力が高い人ほど忘れるスピードも速いものだ。新たに自ら気づいたことはそう簡単には忘れない。つまりその人の成長力は気づく力に真に依存している。この積み重ねがその人の本当の力になる。 』
➡発想刺激を受けて閃くことがなぜ重要なのかが分かります
以上、この本には人材に関する示唆がいろいろとありましたが、私はこれから必要性が高まる人材の要件として、2つの軸を考えてます。それは能力軸と人間力軸です。
能力軸では、「頭の良さ」(=回答力が高い)はベースとして必要ですが、その上の「賢さ」(=質問力が高い)も必要となります。そしてさらにその上の領域として、好奇心旺盛で、常識にとらわれないアイデアを閃くことができ、常識外のことでも実行できる「変人」と言われるレベルまでいくといいですね。
人間力軸では、根が素直で、目配り気配りの効く「いい奴」であることはベースとして必要ですが、その上で人が付いて行きたくなる「チャーミングさ」もあるといいですね。「チャーミング」に必要な要件としては、真っ当な自分の考えを持ち、ブレないということが重要だと思います。
以上まとめると、「チャーミングな変人」が今後求められる人材像の私なりの定義となります。(笑)