ほぼ日の學校
2021年6月28日に開校した「ほぼ日の學校」という動画コンテンツサービスがあります。https://school.1101.com
最近使ってみたら、これは内容もさることながら視聴システムが画期的で、読書と動画視聴のいいとこ取りをした、今までなかったアイデアだと思いました。
「ほぼ日の學校」ではいろいろな方のインタビュー動画を視聴できるのですが、動画に連動して話した言葉が欄外に文字としても表示されます。話した言葉がスクリプトとして画面下に表示される動画はよくありますが、ほぼ日の學校のシステムでは、話した言葉がいい感じの区切りで文字表示されます。(このいい感じの区切りが大事です。)文字は動画表示欄外にあり、欄外の文字を上下にスクロールすると、動画を止めることなく文字を読み進めたり、前の言葉に戻ったりすることができます。(今まで似たようなシステムはなかったと思います。)
動画を視ると、その人の言葉だけでなく、顔の表情や話す間合いなどの言葉にはできない部分まで分かるので、その人の伝えたいことが本を読むよりよく分かります。一方、本を読む場合は、気になったフレーズにマーカーで印を付けたりしながら、自分でじっくり考えて、いわば能動的に学習するので、内容で気になった部分が頭によく残ります。動画を視聴する場合は、話している内容は勝手に頭に入ってくるので、いわば受動的な学習となり、後から内容を思い出そうとしても意外と残っていません。動画を視ながらいいと思ったフレーズをメモればいいのですが、いちいちメモを取るのは面倒くさいので結局はやりません。
「ほぼ日の學校」のシステムでは、表示されたフレーズ単位に付箋をつけることが簡単にでき、それが保存されてマイページに一覧で表示されます。
つまり動画を1本視終わった後に、自分がいいなと思ったフレーズだけ抜き書きしたノートが出来上がります。コピーライターとして言葉に拘ってきた糸井重里さんだからこそリクエストしたに違いない、言葉を大切に扱う今までにないシステムだと思いました。
インタビューを収録されている方は、有名な方から私は全く知らない方まで千差万別多種多様な方がいらっしゃいます。この人のインタビュー聞いてみたいなと思った方が多数登録されていましたので、物は試しと早速会員となり使ってみました。
この方は面白い人に違いないと以前から目を付けていた前京大総長の山極寿一さんのインタビュー動画もありました。視聴したところ、予想通り大変面白かったです。(発想刺激になる言葉がたくさん出てきて、たくさん付箋をつけました。)
以下、山極さんのインタビュー動画で、私が付箋を付けた言葉からの抜粋です。
『我々の脳には、知識になる知能という部分と、感情となって現れる意識の部分がある。それが両方作用して判断基準になったり、決定を下すプロセスになる。だけど今の時代は科学技術で、知能をつかさどっていた知識の部分を外出しにした。でも知識にならない部分、感情として情報にならない部分は取り残されていく。』
『人間がいかに幸福であるかを考えたとき、効率性を指標にしてはいけない。時間を効率性に売り渡してしまったら幸福は遠ざかるのです。』
『今起こってることはどういうことか、みんな日記を書かなくなくなった。日記を付けずに何をやっているかというと、スケジュール表を埋めている。それは現在を未来に売り渡す行為。日記は過去というものを振り返る作業ですよね。過去の上に今があるということで、その今が重要なんです。』
『ところがスケジュールは、今ではなくて未来が重要なんです。それは間違ってないと思う。でも未来にすべてを売り渡してしまったら幸福は消し飛んじゃいますよ。だって未来ってわからないから。しかも未来に予想外のことが起こるという幸せを失ってしまう。明日何も予定がない、どうしたらいいかわからない、これ幸せじゃないですか』
『オンラインでやってもいい。だけど、何回かは会わなくちゃ。会ってお互いの気持ちを分かちあいながら共同作業する。スポーツでもコンサートでも食事でもなんでもいい。それらを通じて時間を共有するということをやるべきだと思う。みんなが同じ時間、同じ場所で作業をすることによって、我々は共同意識を持つことができる。ああ 仲間なんだって。それを全くやらないで、人間同士がつながりあえるかといったら、それは無理です。』
『日常生活で培った人間関係を、会えない状況では、オンラインでつなぎましょう、これはできると思うんです。でもまったく会わずに、オンラインだけでやりましょうというのは無理な話です。順番を間違えてはいけないと思いますね』
『信頼というのは、お互いに利益になることを確信しあうという話ではない。同じ時間を一緒に過ごすのがいかに大事かということです。信頼というのは「時間の関数」だと思っている。楽しいことや辛いこと、いろんなことが起こるだろうが、同じ時間を一緒に過ごした経験が信頼感を紡ぐ。それはゴリラから教わった』
山極さんの言葉には、これからやるべきことの発想に繋がるいろいろなヒントが含まれていました。
「ほぼ日の學校」はまだ視始めたばかりですが、山極寿一さんの他にも、濱口秀司さん、立川志の輔さんの授業はやはり面白かったです。「ほぼ日の學校」は、普段自分が接しないタイプの方のお話を聴け、いろいろな発想刺激を得ることができる格好の学びの場だと思いました。
「ほぼ日の學校」を視聴するには通常は680円/月の会費が必要ですが、今なら最初の1か月無料なので、試しに自分の興味を持った方の動画を視て、この動画+文字のハイブリットシステムを体験されることお勧めです。