理想の就活(24卒モデル)

就活生は大学入試のような感覚で就活に臨むことがよくあります。大学入試の場合、合格した大学の中で偏差値(=合格の難易度)が一番高い大学を選ぶ(=入学する)というのが一般的ですが、就活でも、内定を取れた会社の中でどこにするか迷い、最終的には就活偏差値(=内定を取る難易度)の一番高い会社を選ぶ(=入社する)という選択をしがちです。

これは入社する会社を決める際に迷ったら、世の中の評価に従って決めるという一見合理的な方法に見えますが、実は大きな落とし穴があります。日本の場合、大学生に対する世間の評価は入学時点の成績(=入試偏差値)で、卒業時の成績(=どれだけ力をつけたか)はほとんど評価されません。一方社会人になると、当然ですがどこの会社に入ったか(入社した時点の能力)で評価されるのではなく、その後成長してどのくらい仕事ができるようになったかで評価されます。

スポーツに例えると、甲子園で優勝した選手がプロに入った場合、優勝したことで評価されるのは入団までで、その後はプロでやっていける力をつけなければ1軍に上がることはできません。

社会人になるということは、いわばプロの世界に入るということなので、選択に迷ったら(就活偏差値は気にせず)一番力がつきそうだと思った会社に入るのがいいと思います。

ここで一番力がつく会社とはどんな会社でしょう? 成長中のベンチャー企業、Global展開している大企業、優秀な社員が多い会社等々いろいろな条件が考えられますが、実はその会社の社風が自分に合うがどうかが最も重要な要素だと私は思っています。なぜ社風かというと、それは仕事力をつけるためのメカニズムからきています。

私は仕事力をつけるためには、①自分で考えたことを②自分でやり③結果を出すというサイクルを、仕事で一生懸命やり続けるしか他に方法はないと考えています。

プロの世界は厳しいので、第一線で通用する力をつけるためには、結構な期間このサイクルをやり続けなくてはならず、一生懸命をやり続けるためには社風が合うがどうかがカギとなります。

毎年就活の時期になると、新卒3年以内に3割転職するという記事が出ますが、新卒3年以内に辞める場合の転職理由は、その会社の社風とのミスマッチが結構な割合で占めていると思います。

では社風ってどうやったら分かるのでしょう。社風は採用ホームページを見ても分かりません。社風の言語化は難しく、自分で感じ取るしかありません。そのため、社風を感じ取るためには、その会社の複数の社員と話をする必要があります。今だと、インターンシップに参加する、OB/OG紹介サービスを使う、ゼミ/サークル等の繋がりで社員の人にコンタクトする等の方法があると思います。

最近、三井物産が採用方法を大きく変更するという動きがありました。具体的には23年卒の採用から、次の変更をすることが採用ホームページ上で告知されました。

①インターンを選考直結型にし、インターン経由以外の採用は行わない。

②学事日程に合わせてインターンに参加できるよう、インターンは通年(12月~7月)で8回実施する。(インターン参加枠は合計355名とかなり多いです。)

これは、インターン参加により社風を感じることができ、自分に合う会社がどうかを判断した上で入社するかどうかを決めることができるようになるので、学生にとっては非常にいい話だと思います。また、インターン選考に受からないと本選考に行けないということは、早い段階で内定可能性があるかどうかを学生が分かり、内定する可能性がないのに、本選考に向けて準備、選考等の無駄な時間をかけることがなくなります。

企業にとっては、三井物産と同じような大規模のインターンをしようとすると社員の負荷がかなり増え大変ですが、他の企業もこの動きに追従してくれると、いろいろな会社の社風を比較できるようになり、より新卒入社時のミスマッチが減るようになると思います。

24卒の就活は、23卒と同じであれば、2022年夏から実質スタートし、大企業の場合は2023年6月には終了する形になりますが、三井物産の採用方法変更がきっかけとなって、日系大手企業の採用活動に次のような変化が起きるのではないかと、私は予想しています。(あくまで個人的な予想です。)

①日系企業の採用直結インターンの増加。その場合、3日間の対面インターンが主流になると想定。(インターンの期間が1日では能力・相性を見るのには短すぎ、5日だと受け入れ負荷が大きくなるため)

②内々定時期の分散化+早期化。具体的には、2022年1月頃から内々定が出始め、3月が内々定出しのピーク、6月に採用枠の残りの内々定が出ると予想。

仮に、上記のような変化が起こるとした場合の、理想の就活スタイルはどんな形がいいのか考えてみました。

まず、理想の就活スタイルの満たすべき条件は、次の2つです。

①自分に合う会社を見つけるために、社風を感じ取るのに必要な時間はかける。

②しかし、大学時代は自分の興味関心あることに首を突っ込める貴重な時間なので、就活にかける時間を極力少なくする。

私はこの5年間J-CADという社風を感じ取るコツを伝授する就活生のコミュニティを運営してきましたが、その経験をベースに、この一見矛盾するような条件を満たすためのアクションを、24卒をモデルとして考えてみました。以下そのアクション例です。

・22年3月:自分史を書いてみる。自分の人生の振り返りになるので、この時期にやっておくといいです。

・22年4~7月:社風を感じ取るコツをセミナー等で学び、いろいろなツテを活用して企業の社員とZoomで1on1面談をする機会を持つ。(オンラインの場合は、1on1でないと社風を感じ取るのが難しくなります。)

理想は1社当たり3名の社員と1on1をする機会を持てるといいです。(1社当たり最低3名の社員と1on1をすると社風を感じ取れることが、これまでの「J-CAD」の経験上分かっています。)例えば、9名の社員と面談する機会がある場合、この時期は、各社1名づつ9社の社員と面談するより、各社3名づつ3社の社員と面談する方がいいですね。というのは、この時期に大事なことは、社風の違いはZoom 1on1でも分かるということを実感することと、企業毎に社風は自分が思っていたより結構違うものだと実感することだからです。

また、面談する企業の数は6社くらいあるといいですね。6社くらい面談すると、世の中で自分に合うのはこんな社風の会社なんだという相場感がなんとなく分かるようになります。(この時期は、まず社風を感じ取る実践をしておくことが重要なので、面談する社員は自分の志望する企業の社員である必要はありません。)

・22年8~9月:興味を持った企業の社員とZoom 1on1を繰り返す。(1on1で話す機会を設けられるのなら、必ずしもサマーインターンに行く必要はありません。)

この時期に会うのは1社1名でもよく、できるだけ幅広い業界のいろいろな企業の社員の話を聞くといいですね。

→9月末:それまでに出会った20~30社程度の中から、(直感で)合いそうだなと感じた企業10社に絞り込む。

ここで補足しておくと、夏休みの約2ヵ月で20社の話を聞くというと大変そうですが、1on1をする時間は1人当たり30分程度でよく、1社1人と1on1をするとした場合、20名とやっても10時間程度なので、毎週1時間程度Zoomをするだけでよく、時間はほとんどかかりません。(インターンだけで20社の話を聞こうとすると、これは大変です。エントリーを30社以上しないと20社のインターンにはまず行けないので、6月くらいからES作成、Webテスト受験、面接選考等と就活漬けになってしまい、他のことができなくなってしまいます。)

・22年10月~12月:9月末に絞った10社の社員とZoom面談を繰り返す。1社当たりは最低3名と面談するよう努める。すると、この10社の社風の違い、自分に合うのはどの会社かが確実に分かるようになります。

→12月末:10社の中から、合うなと感じた4社に絞り込む

・23年1月~2月:4社の選考直結インターン(3日間?)に参加

*選考直結インターンが当たり前になっているという前提です

・23年3月前半:4社の最終面接を受験。合うと感じた企業には内定しやすいでの、例えば4社中3社から内々定が出る→入社候補を内々定3社から2社に絞る

・23年3月後半:絞った2社の社員と(オンラインではなく)対面で面談を繰り返す。理想は両方の社員に5名づつ会えるといいですね。

→3月末:直感で合うと感じた方の会社に内々定を承諾する。

・そして、大学生活最後の1年間は、自分の興味関心あることに熱中する。(これが一番大事)

以上示したのはあくまで24卒を例としたモデルケースで、こうしなければいけないというものではないですが、こういうプロセスを経れば、最終的に自分に合う企業に入社できる理想的な就活になると思います。

もちろん、「社風を感じ取るセミナーってどこにあるの?」とか「Zoom 1on1をする社員をどうやって見つけるの?」とか、実践に当たってはいろいろとハードルはありますが、それについての解決策は、私もこれから試行錯誤しながら考えていきたいと思います。

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