理想の就活

2018年10月9日に経団連は、21年卒の就活から就職ルールを廃止することを正式に発表しました。(経団連が定めていた20卒までの就職ルールは、6月1日選考開始というものでした。) また、2019年4月22日に経団連と大学側は通年採用を拡大することを合意し正式に発表しました。以上、2つの流れより、今後就活の早期化、長期化が進むと見られています。

私が、学生にとっての就活の課題と考えているのは次の3点です。

①就活が最終学年までかかるため、一番重要な最終学年に卒論、修論等に専念できない。 私は理系でしたが、4年で卒論研究に取り組むようになって(自分で考えるようになって)初めて専門の勉強が面白いと感じました。一番面白くなる最終学年に就活に時間を取られるのはもったいないですね。

②就活に膨大な労力がかかる。 本選考のエントリーシート (ES) 作成、面接のみならず、インターン選考のES、面接等かなりの時間が割かれます。また、最近はESの代わりに動画の提出を求める企業が出てきており、就活生の負荷はさらに増える傾向にあります。

③そもそも受ける企業をどうやって選んだらいいのか分からない。 現状は、取り敢えず自己分析をして「やりたいこと探し」をして、それができる企業(かつ学生の人気の高い企業)を志望する学生が多いですが、結果として入社する会社とのミスマッチが結構起こっています。(新卒3年以内に3割転職すると言われていますが、この時期の主な転職理由は会社とのミスマッチと推察します)

私は、大学時代は自分の学びたいこと(大学の授業とは限らず)に打ち込む時代だと考えています。(この点についてはこのサイトの「大学での楽しみ方」に記載しましたので、そちらを参照下さい。)しかしこのままの流れだと、来年以降今まで以上に就活に時間をかけなくてはならなくなり、本来やるべき(楽しむべき)学びの時間がどんどん減っていくのではと危惧しています。

ここで、現在の就活ルールを考慮せずに、①②③の課題を解決する理想の就活にするための施策を考えてみました。

①の対策としては、学部4年or修士2年になる前の春休み中に就活が終わるといいので、遅くとも3月前半で全ての内定が決まり、3月末までに行く会社を確定させ、4月から最終学年に打ち込みたいことに1年間専念できるスケジュールとする。(各社の選考開始時期を揃えるのではなく、最終内定応諾時期を入社1年前の3月末に揃えるという考え方です。)

②の対策として、ESを各社共通フォーマットにして、作成の手間を大幅に削減する。また、手間をかけずにいろいろな企業の社員と対話できる機会を持てるようにするため、インターンシップの選考及びインターンシップ参加にかかる時間を効率化する。

③の対策としては、受ける企業の選び方はいろいろなやり方があるので、そのいくつかを学んで、自分に一番フィットする方法を見つける。

①はスケジュールを変更するだけですが、②③についてもう少し具体的なアイデアを補足します。(私がプロデュースしている企画に「J-CAD」という選抜型の就活コミュニティがあります。今年で3年目になりますが、そこでやって分かったことをヒントに考えてみました。)

まず②の対策として考えたのが、ES共通フォーマットとして自分史を使うというアイデアです。J-CADでは、実際に参加学生に自分史を書いてもらっていますが、これは幼稚園~現在に至るまての自分の過去を振り返ってトピックを記載してもらうものです。分量は2000字程度なので、書いた学生に聞いてみると、皆2~3時間で書き上げているようです。ESでよく聞かれる大学時代の自己PR(いわゆる「学生時代に力を入れたこと」)は、良く見せるには何を書くかとか作戦を練る必要があり、作成には時間がかかります。一方、自分史は大小自分のトピックを書き出すだけなので作成に時間がかかりません。(かつ、書いていて昔を思い出して楽しかったという声を学生からよく聞きます。)

この自分史はたまたまあるキッカケでJ-CADに導入した施策ですが、学生の書いてくれた自分史を読んでみると、その学生の能力、キャラクターが何となく分かります。そのため、私が昔採用をやっているときによく読んでいた通常パターンのES(各企業の独自質問に対する回答を書かせるES)より、自社に内定可能性があるかどうかがよく分かります。そのため、面接する学生を絞ることができ、結果として面接時に一人一人の学生とじっくり向き合えるようになります。

面接する学生を絞ることができれば、現在の選考システムで発生している、合格可能性のほとんどない学生に費やさせている面接に至るまでの選抜プロセスの時間、また遠隔地の学生にとっては大きな負担になる選考過程で発生する旅費も節約することができます。

次に③の対策としては、学生に自分に向いている企業を見つける方法をいくつか教えることだと思います。それも早い時期がいいですね。(例えば就活を意識し始める3年生になる前の春休み)

今はどこの大学にも就活サポートセンターがありますが、そこで教えているのはESの書き方とか面接対策がメインで、いわゆる内定の取り方を教える組織になっていて、そもそも自分に向いている企業をどうやって見つけたらいいのかは教えてくれません。実際に就活を終えた学生に聞いてみても、就活を始めてから終わるまでにこの見つけ方の話を聞いたことはないという学生がほとんどです。

では学生はどうしているのかというと、ほとんどの学生はやりたいことは特にないので、まず自己分析をして自分の軸を決め、その軸をもとに自分のやりたいことを作りそれができる業界or職種を受けるというのが一般的です。

ここで注意した方がいいのは、もともとやりたかったことがあるのではなく、就活に際して(無理矢理)作ったやりたいことなので、それは本当にやりたいことかどうかは実は分からないという点です。

では、他にどんな方法があるのでしょうか。正解は1つではなく、いろいろなやり方があると思います。そのため、就活生はいくつかの方法を学んで、その中で自分に合うと思った方法を選べるようになるといいと思います。

ちなみに上で述べた「J-CAD」では、ミスマッチのリスクを減らした企業選びをするために、社風を重視して企業選びをする方法を伝授しています。

以上、冒頭述べた課題に対する私の解決案ですが、就活のそもそもの課題として別にあるのが、学生のエントリーが一部の人気企業に集中して、学生に膨大なムダが発生している点です。

人気企業だと採用予定数が例えば100名に対して、応募者が5000名というようなことが当たり前に発生しますが、実際に採用可能性があるのは予定数の3倍くらいだと思います。(参考に大学入試の倍率を見てみると、東大入試の過去10年間の倍率は3.0~3.3倍とほぼ変動していません。)つまり、仮に可能性あるのは3倍というのが正しいとすると、5000名中4700名の学生は内定する可能性はほとんどないのに、応募及び選考にかなりの時間を取られていることになります。(場合によっては旅費、宿泊費も)

一方企業の採用担当者側も、5000名の学生に対応するとなると、膨大な手間がかかることになります。そのため、面接可能な数まで応募学生を絞るために、何段階かの選考を行いますが、数が多いと当然ながら一人一人とじっくり向き合うことはできなくなります。

大学入試が倍率3倍くらいにしかならないのは、入試時期が重なりたくさんは受験できないという制約があるからですが、もう一つの理由は事前の模擬試験等の結果から受かる可能性がほとんどない大学にはエントリーしないからです。

就活は大学入試と違って能力だけで決まるのではなく、そこにその企業との相性という要素が絡んでくるのでややこしくなります。(つまり受かる可能性がある会社を絞りきれない)

そこで、必要となるのが、企業の選び方の指南です。

来年以降、就活のやり方が変動する時代に入っていくと思いますが、大学と企業が協力して、学生にこの無駄な時間を費やさせないためにどうすればいいのか、よく知恵を絞ってActionしていく必要があると思います。そのActionにより、大学のさらなる就活予備校化が進むのを食い止められるのではないかと期待しています。

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