4STEPs 解説(STEP2)
STEP2―上司は部下を信頼して仕事を任せる
これは、ようするに「任せるマネジメントをしなさい」ということです。部下に仕事を任せるためには、部下を信頼する必要がありますが、本当に部下を信頼できるのは、部下からも信頼されている場合だけです。そのため、ステップ1ができていることが前提条件となります。
この逆は「管理するマネジメント」です。この場合、部下は何をするにも上司の判断が必要となり、自分で考えることをしなくなります。結果、上司の器を越える人材を育てることはできません。人材育成上はまずいやり方だと私は思います。
ただし「任せる」と言っても、それは手段であって、目的は部下に自ら考えさせることです。どこまで任せるかは、部下によって変える必要があります。
また任せっ放しももちろんダメです。指示はしないにしても、いつでも相談に乗れるよう、あるいは部下のやりたいことを後押しできるよう、部下の行動を見守っていることが大切です。
後押しするときは、「その案件が、部下が自分で考えたことであり、やる気があるかどうか」を確認するといいでしょう。参考までに、「着手する前の推定成功確率」は、大ざっぱに分類すると、次の三つになります。
・70%=ほぼ成功する
・50%=どちらに転ぶかわからない
・30%=ほぼ失敗する
というものです。つまり、70%の案件は「GO」、30%の案件は「NOT GO」。これは容易に判断できます。悩ましいのは50%の案件です。
「失敗を気にせずにやれ」というスタンスを取るなら「GO」サインでいいようなものですが、実際のビジネスだと2回に1回失敗していると、ダメージが大きくなります。現実的には「NOT GO」を出さざるをえないところです。
ここで着目するべきは、50%の案件を持ってきた部下のやる気です。自分で考えたアイデアを自分で実行しようとしているなら、やる気あり。上司や先輩の考えたことを実行しようとしているなら、やる気より気合いがある場合がほとんどでしょう。
先ほどの「着手する前の推定成功確率」は、やる気のある人がやると、実際の成功確率は感覚的に20%くらい上がる気がします。つまり。
・70% → 90% = 間違いなく成功する
・50% → 70% = ほぼ成功する
・30% → 50% = どちらに転ぶかわからない
というふうに変容します。この感覚が正しいとすれば、部下にやる気があるなら、成功確率50%の案件であっても、「GO」サインを出してもいいことになります。上司がそう判断したなら、部下の後押しをしてやるといいでしょう。
成功確率50%の案件を進められるようになると、部下の実行機会が増え、同時に成長機会を増やしてやることができますから、なおさらいいと思います。
ここまではどの部下に対しても使える判断基準です。
次に成功実績のトラックレコードを持っている部下について考えてみましょう。その場合は、本人の成果創出経験を買って、さらに20%、成功確率が高くなると判断してもいいと思います。つまり、
・30% → 50% → 70% = ほぼ成功する
となり、成功確率30%の案件でも、部下にやる気があって、さらに成功実績のトラックレコードを有していれば、かなり高い確率で成功が期待できます。ここまでくると、上司にしてみれば、強力な後押しをしてやる甲斐があるというものでしょう。
以上のような「成功確率が変化するメカニズム」を意識すると、成功確率が低くても、部下の背中を押してやることがしやすくなります。ようは部下にやってみる機会を増やしてやることが、「任せるマネジメント」のポイントと言えます。
上司だけではなく、若手もこのメカニズムを意識しておくといいと思います。つまり、自分の考えたやりたいことをやるためには、(小さくても構わないので)仕事で成果を出すことを積み重ねて、成果創出のトラックレコードを作ることが大事だということです。
なお、トラックレコードで大事なのは、打率ではなくヒットを何本打ったかなので、たくさん失敗しても構わないので、成功体験をコツコツ積み重ねていって下さい。