会社の選び方「生け花剣山理論」

今の大学生は、就活の際に、会社の知名度や規模、業績、給与、福利厚生、研修体制など、明確なスペックを判断材料としていることが多いようです。それに加えて、職種や、自分のやりたい仕事ができるかどうかを見るでしょう。

しかし、そういったことに判断軸を置くと、たいていの場合会社選びを間違えます。

たとえばメディアが報道する業界分析などを見て、いい会社かどうかを見るとして、そのデータは信用できるでしょうか。分析は正しくとも、データそのものが過去のものなので、10年後の状態はわかりません。いかに優秀な分析のプロでも、10年後の会社の姿など正確に予測することは不可能なのです。

時代は常に動いていて、企業の業績はそれに大きく左右されます。とくに近年は、変化のスピードが速いので、数年先のことさえわからないのが現実です。過去10年のデータを頼みに判断すると、「こんなはずではなかった」ということになりかねません。

加えて職種や自分のやりたい仕事に関しては、就活段階で選ぶのはあまり意味のないこと。どんな仕事でも実は「使う力」は基本的に同じなので(もちろん必要な知識は違いますが)、置かれたその場でがんばって力をつければ、仕事は面白くなります。

では、何を判断材料にすればいいのかといえば、「社風が合うかどうか」なのです。採用する会社側も、就活をしている学生側も、いまは「社風」をそれほど重視はしていないように感じています。しかし、「社風」というのは、そこで働いている人たちが生み出す雰囲気。企業が長い時間をかけて醸成してきたものですから、時代が進んでも、そう簡単に変わるものではありません。これほど信用できる判断材料はないのです。

なかには「社風なんか、入社してみないとわからないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

「社員三人と会えば、社風は感じ取れる」

というのが私の考えです。それも入社五年目以上の、すでに社風に染まっている社員と会うのがいい。

もちろん彼らとしっかりコミュニケーションをとることが大切です。面接の場で面接官と話したところで、ワンウェイ・コミュニケーションにしかならないので、それは数に入りません。面接以外の場―OB訪問や座談会などを利用することをお勧めします。

なぜ三人かと言うと、一人では自分に合っていると感じたとしても、社風が合ったのではなく「その人の個性が合っただけ」という可能性があるからです。

二人に会って、何か共通項のようなものがあれば、それが「社風」である可能性は高くなります。ただ一定程度、個性が混在している可能性も否定できません。

だから三人。三人の間に共通部分があれば、それを「社風」と見なしてもいいと思います。これを私は「生け花剣山理論」と呼んでいるのですが、生け花を見ると、生けてある花(社員)が咲いている場所はそれぞれ違っていても、茎をたどればどの花も剣山という共通部分にたどり着きます。ここがいわば社風であり、その剣山の場所は三人に会えばだいたい特定できるというわけです。

とはいえ、入社五年目以上の社員三人に会うのは、意外と難しいことです。就活時には時間的な制約もあるし、五年目以上の社員は仕事が忙しいため、簡単に会ってくれるとは限らないからです。

そういう場合は、内定を獲得した後でもOKです。人事に頼むなりして、五年目以上の社員に会わせてもらい、自分に合うかどうかの最終判断をするといいでしょう。

就職は結婚のようなもの。結婚相手を探すときに、お見合い写真や履歴書を見て、相手とちょっと話しただけで結婚を決めないのと同じで、就職だって自分に合う会社を見つけるには、労を惜しんではいけません。

自分の足でいろんな会社を回り、自分の目と口でコミュニケーションをとり、自分で判断する。この三つのプロセスを経て決めた自分に合う会社であれば、一生懸命がんばり続けることができるはずです。